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G-works Creative Studio|企業向け写真・映像制作

Takadaの視点

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シリーズ『ものを見る目』

03 海で覚えた、待つ目

海に出ると、自分の都合がほとんど通用しない。

風も、潮も、魚の動きも、こちらの予定には合わせてくれない。

昨日よく釣れた場所に行っても、今日は何も起こらないことがある。
同じ時間、同じ仕掛け、同じような天気に見えても、海の中はまったく違っている。

できるのは、その日の海を見ながら準備をして、何かが起こる瞬間を待つことだけだ。

釣りを長く続けているうちに、待つことは、何もしないことではないと分かってきた。

むしろ、動かずに見続けている時間のほうが、多くのことを教えてくれる。

1.  思いどおりにならない場所

釣りは、ずいぶん長く続けてきた。

川でのフライフィッシングやテンカラ、ブラックバス、海でのジギングやタイラバ、マルイカ。

釣り方も場所も違うけれど、どの釣りにも共通していることがある。

自分の思いどおりにはならないということだ。

 

魚がそこにいるのか。
仕掛けを見ているのか。
見ていても食べる気がないのか。

こちらからは、ほとんど何も見えない。

見えないものを相手にしながら、風や水の色、潮の流れ、竿先のわずかな変化から、海の中を想像する。

手応えがない時間が続くと、どうしても何かを変えたくなる。

場所を変える。
仕掛けを変える。
動かし方を変える。

もちろん、変えることが必要なときもある。

けれど、焦って動き続けていると、本当は何が起きているのか分からなくなってしまう。

少し待ってみる。

同じ場所を、もう少し見てみる。

その時間があるからこそ、先ほどまで気づかなかった変化が見えてくることがある。

2. 待つことは、止まることではない

待つという言葉には、何もせずに時間を過ごすような印象がある。

けれど、海での「待つ」は、ただ止まっていることではない。

風向きが変わっていないか。
船の流れ方が変わっていないか。
水面の様子に違いはないか。
竿先に、それまでとは違う動きが出ていないか。

目に見えるものだけでなく、音や身体に伝わる感覚も含めて、周囲を見続けている。

何かが起こったときに、すぐ反応できるように準備をしながら待っている。

だから、待っている時間にも、静かな集中がある。

外から見れば、ただ竿を持って海を眺めているだけかもしれない。

けれど本人の中では、いくつもの小さな判断が続いている。

動くべきか。まだ待つべきか。

今の違和感は、気のせいなのか。

海は答えをすぐには教えてくれない。

だからこそ、答えを急がずに見続ける目が必要になる。

3.早く結果を求めると、見えなくなる

釣れない時間が続くと、不安になる。

自分だけ間違っているのではないか。
もっと早く別の方法に変えるべきだったのではないか。

撮影の現場でも、似たような感覚になることがある。

なかなか表情がやわらかくならない。
思っていたような場面が起こらない。
時間だけが過ぎていく。

そんなとき、撮る側が焦ると、その焦りは相手にも伝わる。

もう少し笑ってください。
こちらを向いてください。
今度はこうしてください。

言葉を重ねるほど、人は自分の表情を意識し始める。

自然な姿を撮りたいはずなのに、撮る側が自然な時間を壊してしまう。

海で覚えたのは、答えを急がないことだった。

すぐに結果が出なくても、今はそういう時間なのだと受け入れる。

何かを起こそうとするのではなく、起こるかもしれない変化に気づけるようにしておく。

その姿勢は、人物を撮るときにも、現場を撮るときにもつながっている。

4. 人が自然に戻るまで

撮影が始まると、多くの人は少し緊張する。

カメラを向けられることに慣れている人は、それほど多くない。

普段どおりにしてくださいと言われても、普段どおりにはできない。

手の置き場所を気にしたり、姿勢を正したり、急に笑顔をつくろうとしたりする。

そんなとき、私はすぐに撮り始めるのではなく、少し話をすることがある。

仕事のこと。
最近あったこと。
その場所で普段どのように過ごしているのか。

特別な答えを引き出したいわけではない。

その人が、カメラを意識した状態から、少しずつ普段の自分に戻っていくのを待っている。

話をしている途中で、肩の力が抜けることがある。

誰かの言葉を聞いて、ふっと表情が変わることがある。

撮影用につくった笑顔ではなく、その人自身の表情が戻ってくる瞬間がある。

その瞬間を、こちらの都合で早めることはできない。

ただ、見逃さないように待つことはできる。

5. 現場にも、その場所の時間がある

工場や会社を撮影するときも同じだ。

現場には、こちらが入る前から流れている時間がある。

作業を始める順番。
人と人が声をかけ合う間。
機械の動く音。
仕事に集中しているときの表情。

撮影のためにすべてを止めて、こちらの指示どおりに動いてもらえば、形として整った写真は撮れるかもしれない。

けれど、それだけでは、その会社に普段流れている空気までは写らない。

私はまず、その場所の時間に自分を合わせるようにしている。

人がどう動くのか。
どこで立ち止まるのか。
どんなときに会話が生まれるのか。

しばらく見ていると、その現場らしいリズムが分かってくる。

すると、次に何が起こりそうなのかを、少しだけ予測できるようになる。

海の中は見えない。

人の心も、現場に流れる空気も、すべてが見えるわけではない。

けれど、見えないからこそ、周囲に現れる小さな変化を見逃さないようにする。

6. シャッターを切らない時間

写真を撮る仕事をしていると、シャッターを切っている時間だけが仕事のように見えるかもしれない。

けれど実際には、撮らずに見ている時間のほうが長い。

光が変わるのを待つ。
人の動きが重なるのを待つ。
表情から力が抜けるのを待つ。
その場にいる人たちが、カメラの存在を忘れるのを待つ。

シャッターを切らない時間は、何もしていない時間ではない。

撮るべき瞬間を見つけるための時間だ。

そして、待ったからといって、必ず思いどおりの場面が訪れるわけではない。

海と同じように、最後まで何も起こらないこともある。

それでも、無理につくった瞬間より、その場所で実際に起きた小さな変化を写したいと思う。

派手な出来事でなくてもいい。

人の手が自然に動いた瞬間。
誰かの言葉に、隣の人が少し笑った瞬間。
仕事に向かう目つきが変わった瞬間。

そうしたものは、一瞬で通り過ぎていく。

待つことを知らなければ、気づくこともできない。

7. 海で覚えたこと

海では、自分が中心ではいられない。

天候や潮、魚の都合に合わせながら、自分の動き方を決めていくしかない。

自然を思いどおりに動かすのではなく、自分のほうを合わせていく。

その感覚は、撮影の仕事にも深く残っている。

人をこちらの思いどおりに動かそうとしない。
現場を撮影のためだけの場所に変えすぎない。
すぐに答えを求めず、まずは見ている。

私にとって待つことは、消極的なことではない。

相手を信じることでもある。

その人らしい表情が現れること。
その場所らしい時間が流れ始めること。
見えなかったものが、ふと姿を見せること。

こちらが少し黙り、少し待つことで、初めて見えてくるものがある。

海で覚えたのは、魚を待つ方法だけではなかった。

思いどおりにならないものと向き合いながら、変化が訪れるまで見続けること。

そして、その瞬間が来たときに、迷わず手を動かすこと。

その「待つ目」は、今も撮影の中にある。

会社案内や採用に使う写真・映像でも、
まず大切にしているのは、その会社をよく見ることです。

Picture of Naonori Takada

Naonori Takada

Photographer
Videographer
Director

  • 1989年 広告カメラマンとして活動開始
  • プロダクション、制作会社にてフォトグラファー、ディレクターとして勤務
  • 2014年10月 独立後ジーワークス設立
  • 千葉県鎌ケ谷市を拠点に、企業向けの写真・映像制作を行っています。
  • 特技:料理
  • 趣味:釣り、山登り