G-works Creative Studio|企業向け写真・映像制作
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山の撮影をしていた頃、いちばん大事だったのは、カメラの前に立つことではありませんでした。
もちろん、どこから撮るか、何mmのレンズを使うか、光をどう読むか。そういう技術的な判断も必要です。けれど山では、それ以前に見ておかなければならないものがありました。
まずは空気を読むこと。
雲の流れ。
風の匂い。
雪面お硬さ。
遠くの空の明るさ。
人の疲れ方。
自分の呼吸の乱れ。
そういった見えない情報が、
その日の山の教条を決めていきます。
このシリーズでは、山での撮影経験と、
今の仕事にどうつながっているのかを、書き残しています。
1. 撮る前に、まず空気を読む
2. 山は急がせてくれない
3. 見えている景色の奥になるもの
4. 無理に近づかないこと
5. 空気は、写そうとしないと写らない
山の撮影は、こちらの都合だけでは進みません。
晴れてほしいと思っても、山は晴れてくれません。もう少し待ちたいと思っても、天候が崩れれば引き返さなければなりません。いい光が来そうでも、その場所に立っていて安全かどうかを考えなければいけません。
写真を撮ることよりも先に、その場の空気を読むことが必要でした。
この雲は抜けるのか。風は強くなるのか。この先に進んでいいのか。今日は無理をしない方がいいのか。
山で覚えた「見る」は、被写体を見つめることだけではありません。周囲の変化に気づき、まだ起きていないことを想像することでもありました。
若い頃の自分は、いい写真を撮りたい気持ちが強く、どうしても前のめりになっていたと思います。
けれど山では、急ぐほど見えなくなります。
息が上がれば、周りを見る余裕がなくなる。焦れば、空の変化を見落とす。
撮りたい気持ちが強すぎると、引き返す判断が遅れる。
山は、こちらの欲をよく見透かしているようなところがありました。いい瞬間は、力ずくでは撮れません。
その場にいて、待って、感じて、少し先を読む。その積み重ねの中で、ようやく一枚が撮れることがありました。
山での経験は、写真の技術というより、ものごとへの向き合い方を変えてくれたように思います。
山で撮影をしていると、美しい景色に出会うことがあります。
朝焼けに染まる稜線。雲の切れ間から差す光。風に揺れる草。雪の上に残った足跡。
けれど、その美しさだけを撮ろうとすると、どこか薄くなることがあります。
その景色の前に、どんな時間があったのか。どんな天候の変化があったのか。そこに立つまでに、どんな判断があったのか。目の前の美しさは、突然そこに現れたものではありません。
その手前にある空気や時間を感じることで、写真の見え方は変わっていきます。
これは、今の仕事にもつながっています。
会社や現場を撮るときも、見えているものだけを撮ればいいわけではありません。機械が動いている。人が作業をしている。商品が並んでいる。
それだけなら、記録としては残せます。
でも、その奥にある空気を見ようとすると、少し違ってきます。
なぜこの人は、この手順を大事にしているのか。この現場には、どんな緊張感があるのか。この会社らしさは、どこに滲んでいるのか。
山で覚えた「空気を読む目」は、今も撮影の前に働いています。
山では、近づけばいいというものではありません。
もう少し先へ行けば、もっといい景色が見えるかもしれない。あと少し粘れば、もっといい光が差すかもしれない。
そう思うことは何度もありました。
でも、行かない判断をすることも大事です。撮らない判断をすることもある。待つこともある。引き返すこともある。
それは、あきらめることではなく、その場をちゃんと見ることなのだと思います。
人を撮るときも、会社を撮るときも、同じことを感じます。
無理に近づきすぎると、相手の自然な表情は消えてしまう。急いで答えを出そうとすると、その人や会社が持っている本来の空気を見落としてしまう。
撮影は、踏み込む仕事であると同時に、踏み込みすぎない仕事でもあります。
写真や映像には、目に見えるものしか写らないようでいて、実はそうではありません。
その場の緊張感。人と人との距離。仕事に向かう姿勢。言葉になる前の気配。
そういうものは、意識して見ていないと写りません。
山で、空や風や雲を読んでいたように、今は現場の空気を読むようにしています。
撮影の前に話を聞く。現場を歩く。作業の流れを見る。人の表情が少しゆるむ瞬間を待つ。
そうやって、目の前にあるものだけではなく、その場に流れているものを感じようとしています。
山で覚えたのは、特別な景色の撮り方ではありません。
見えない変化に気づくこと。焦らず待つこと。無理に動かないこと。そして、目の前の一枚の奥にある時間を想像すること。
それは今も、撮影の前に大切にしている「見る目」のひとつです。
会社案内や採用に使う写真・映像でも、まず大切にしているのは、その会社をよく見ることです。